探究主任にいきなりなったので、年度末に取り組んだこと

日本人学校

2024年度末、組織再編の混乱も冷めやらぬ中で、私は総務部で「探究・国際理解」の責任者を任されました。前任者から一応の引き継ぎはあったものの、かつて探究を中心となって担っていた先生方はすでに退職されており、長く勤務されている先生方の多くも過去の取り組みに関心を持っていない様子でした。

探究の年間指導計画は「完成済み」とされていたものの、その内容は新カリキュラムが求める「探究的な学び」とは大きくかけ離れており、実態に即していませんでした。さらに、卒業した学年からは「もっと深い探究をやらせたかった」という声があり、新高3の学年からは「旧カリで実施していた論文指導を復活させてほしい」という要望もあり、新年度当初にすべて練り直す必要がある状況でした。

そんな中で私は、「3年間を見越した、日本人学校らしい探究をつくりたい」という思いを軸に、次の3つの取り組みを進めました。

① 学校の過去の探究活動を徹底的に調査

まずは、「この学校では、探究って何をやってきたのか?」を把握することから始めました。前任者の資料だけでは見えない部分が多く、また新カリキュラムを作成した中心人物(私を推薦してくれた先生)もすでに退職しており、意図を汲む手がかりも限られていました。

旧カリキュラム下で行われていた論文作成をベースに、「3年間でどのように探究をマネジメントしていくか」を構想しましたが、かつてその体制を担っていた教員はほぼ退職されており、ノウハウは残っていませんでした。

そのため、まずは自分が直接関わる3年生に限定して、論文型探究を試行的に導入し、探究の形を再構築していくことにしました。


② 同僚や管理職と対話を重ね、現場の実情を把握

資料整理と並行して、仮の年間指導計画を次年度の学年主任や分掌長、探究の所掌となった新・総務部のメンバーと共有し、意見を聞きながら見直しを進めました。

とりわけ、推薦入試の面接指導を経験した卒業学年からは、「大学で学びたいことや、その後の進路が明確でない生徒が多い」という課題が共有されました。

そこで、新高3のLHR計画や進路部の3ヵ年指導計画と照らし合わせながら、探究を進路意識につなげていける年間指導計画を再構成していきました。

総務部の中でも、探究に対する理解や意識には温度差があり、「そもそも何から始めればいいのか分からない」という不安の声も多くありました。そうした声に丁寧に耳を傾けつつ、「教員にとっても納得できる探究の形とは何か」という視点を大切にしながら計画の見直しに取り組みました。


③ 探究の理論と他校の実践から学び、自分の軸をつくる

並行して、私自身も探究の理論と本質を学び直す時間をとりました。
学習指導要領を改めて読み込み、学校の教育目標や評価の在り方と照らし合わせながら、調査書や指導要録にどう反映すべきかも整理し直しました。

特に参考になったのは以下の書籍です

  • 『高校教師のための「探究学習」ガイドブック』(上山晋平/明治図書)

  • 『探究が進む学校のつくり方』(酒井淳平・梨子田喬/明治図書)

  • 『探究的な学びのデザイン』(酒井淳平/明治図書)

また、以下のYouTubeチャンネルも活用し、理論と実践の接点を具体的に掴みました:

さらに、他校の探究発表会にもオンラインで参加し、取り組みの内容や運営方法、生徒の表現の質などを観察しました。
一時帰国中には対面での発表会にも参加し、質疑応答を通して「良い探究」と「そうでない探究」の違いについて実感を伴って学ぶことができました。

こうした外部の視点を得たことで、「自校で実現できそうなこと」「譲れない観点」が明確になり、探究主任としての判断軸が自分の中にできてきました。


バタバタの中でも、“整えること”が最初の仕事だった

突然の任命、失われたノウハウ、練り直し必須の年間指導計画ともなりました。そんな状態でスタートした探究主任の仕事は、すぐに成果を出すことよりも、「整えること」「繋ぎ直すこと」が最優先でした。

あまりに地味で、外からは見えにくい部分かもしれません。自己満足かもしれないけれど、ここを曖昧なままにしていたら、新年度はさらに混乱していたはずです。

探究とは、答えの出ない問いと向き合い、考え続ける営みです。その意味で、私自身がまさに「問いと向き合い続ける時間」を過ごした準備期間となりました。

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