白紙運動とは
白紙運動(白紙革命)は、2022年11月下旬、中国各地で発生した抗議活動です。市民や学生が何も書かれていない白い紙を掲げ、ゼロコロナ政策や言論統制への不満を無言で示しました。この象徴的な抗議方法は、検閲により直接的なスローガンや批判的な言葉が削除される状況下で、「無言の抵抗」として各地に広まりました。
参考: BBC News Japan「中国”白紙革命” 抗議広がる」(2022年11月28日)
https://www.bbc.com/japanese/articles/c2l05gqqqz8o
発端 — 新疆ウルムチの火災
複数の国際報道によると、発端は2022年11月24日に新疆ウルムチ市で発生した高層マンション火災でした。現地は厳しいロックダウン下にあり、封鎖措置が救助活動を妨げたとみられ、10人以上が犠牲になったと報じられています(中国当局は公式発表で死者10人と説明)。この惨事が市民の怒りと悲しみを呼び、各地の大学生を中心とした抗議活動の引き金となったとされています。
参考: NHK NEWS WEB「中国 新疆ウルムチで火災 10人死亡」(2022年11月25日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221125/k10013805081000.html
中国在住者としての私の視点
私は2022年当時、中国に滞在していました。日本人コミュニティ内では白紙運動の話題がしばしば出ましたが、具体的な活動場所や時間などの詳細情報は共有されることはありませんでした。厳しい監視体制と情報統制のため、現地での正確な状況を把握することは極めて困難な状況にありました。
地下鉄での出来事(体験談)
これはあくまで私個人の体験です。ある日、白い襟付きシャツを着て地下鉄の構内にいたところ、制服姿の警察官から声をかけられました。身元確認を求められ、私はパスポートのコピーを提示して日本人であることを説明しました。やり取りは数分で終わりましたが、「白い服」というだけで政治的なメッセージを帯びた行動と疑われる可能性があることを実感し、身の引き締まる思いがしました。
白紙の象徴性
白紙や白い服は、通常であれば何の意味も持たない日常の一部です。しかしこの時期の中国では、それが「声を封じられた人々の抗議」の象徴となっていました。言葉ではなく色や形で意思を表現することの力強さと、それに対する当局の神経質なまでの反応を、私は現地で身をもって実感しました。
その後の変化
2022年12月、中国政府は「新十条」を発表し、ゼロコロナ政策の大幅な緩和を開始しました。PCR検査場の撤去、健康コード提示の廃止など、日常生活は急速に変化していきました。しかし私の記憶には、ウルムチ火災の報道と地下鉄でのあの緊張した瞬間が、今も鮮明に残っています。
参考: 朝日新聞デジタル「中国、新型コロナ規制を大幅緩和」(2022年12月7日)
https://www.asahi.com/articles/ASQDB6T52QDBUHBI03R.html
まとめ
白紙運動は、現代中国における自由と統制のせめぎ合いを象徴する歴史的な出来事でした。私自身の体験を通じて、「日常の何気ない行動が、時として政治的な意味を帯びてしまう」という現実の重さを痛感しました。この記憶は単なる過去の一場面ではなく、中国社会の複雑さを理解する上で、今なお私の中で生き続けています。
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