2022年4月より中国にある日本人学校に勤務しております。中国の日本人学校に赴任する前に知っておきたかった中国の教育事情について、紹介していきます。
家族愛の文化
「家族は大事」は世界的な価値観でありますが、中国ではより一層重視されていると感じます。中国での「家族」は、日本人が考える「家族」でなく、イメージとしては「一族」と言ってもいいかもしれません。
2024年の春節(中国のお正月)の前後40日間で延べ90億人が移動したと言われています。『朝日新聞』その多くは、故郷の家族と暮らすための移動のようです。実際、知り合いの中国人は家族で春節を迎えるために、チケットが高騰する飛行機や寿司詰め状態の高鉄(新幹線)を利用して故郷に戻っていました。
家族を大事にする習慣は日常生活でも根付いています。中国の街では、子どもと親や祖父母が手を繋いで歩く姿をよく見かけます。未就学児はもちろん、中高生ぐらいの子どもや中年の方でさえ手を繋いで歩いています。
1974年〜2014年の間に中国では一人っ子政策が行われました。その影響のせいか、子供を中心とした家族の考え方があります。親は子どものために働き、祖父母は孫の世話をすることが退職後の大きな仕事になっています。親は子どものためにできる限りの愛を与え、子は親のために孝行をすることが中国社会において美学です。治安の良い地域でも、両親や祖父母が子どもを学校まで車や電動バイクで送迎しています。
日本と似ている学校教育
中国の学校教育は、日本と同様に6-3−3制が基本です。日本と異なるのは、9月入学であり、大学を含めほとんどが公立学校です。
科挙の歴史をもつ中国では、高考(大学入試)の1回のテスト結果で入学する大学が決まります。重点大学と呼ばれる国として力を入れている大学があり、重点大学への進学に向けて熾烈な受験戦争となります。重点大学を卒業すれば中国政府が就職先である企業を斡旋していた歴史があり、優秀な生徒の多くが重点大学への進学を希望します。
中国国内での受験戦争の激化を見て、中国政府は民間の学習塾や予備校などの営利活動を禁止にしました。『教育新聞』そのため、保護者からの学校での指導により強い期待が寄せられています。良い教育を受けるために、学校の近くのマンションを購入して、重点小学校(国が指導するハイレベルな教育を受けれる学校)に通わせようとする保護者もいるようです。
教師を尊敬する文化
より良い教育から良い将来への期待から、学校への信頼が厚いです。中国では毎年9月10日に「教師節」という教師に感謝を表す日があり、子どもたちから教師へメッセージカードや花束を渡す文化があります。(日本人学校では、このような文化は私は経験したことがありません。)保護者からの贈り物を渡すことで我が子をひいきして教えるように強要するような賄賂の様なことが散見されるようで、現在は規制もあるようです。
中国の教員は、残業をほとんど行いません。日本のような部活はなく、基本的に課外活動はありません。学校の教員になるためには最低修士の学位が必要なのに関わらず、非常に採用面接は高い倍率のようです。高収入の企業の過酷な条件で働くことよりも、残業がなくまとまった休みの多いことが好まれているようです。日本の学校の労働環境で異なるのは、年功序列の給与体制ではなく、授業数や補習などの業務と経歴と結果からなります。
学校教育への要望
自分の子どもによりよい教育を受けさせるために、保護者は学校の教育活動にとても協力的です。中国の学校は、朝早くから登校させ、夜遅くまで授業や補習の時間があります。私の知る学校は、1時間40分の授業を9時間行い、さらに朝自習や夜補習を行なっています。それを支えるのは、家庭です。昼食はもちろん、朝食や間食を準備したり、夕食休憩の短い時間で食べれるように協力する姿があります。また、高い学費や学用費を必死に払うそうです。
よい教育を受けさせるために、学校に要望をあげる保護者も多いです。その要望で、授業が変わったり、教師を変えさせることさえあります。保護者の中には、中国社会の中で力をもつ方もいて、学校としてもそのような意見を無視することができないそうです。年度途中の退職なども普通にあるので、日本のように年間を通じて計画をすることがあまりありません。
日本人学校でも、やはり保護者からの要望は当然ありますので、常日頃から意識しておいた方がいいです。日本のように粘着質に続くわけではなく、意見を言いたいだけのケースもありますし、管理職と話て自分の身分を示したいということもあります。文化の違いなので理解できない場合もありますが、意見を言うことが悪いことではなく、より良い教育を受けさせるために行なっていますので、その後信頼関係を急に築くケースもあります。
日本人学校で働くことは、日本人としての教育を再認識する側面と現地の文化を通じて国際的な視点を獲得する側面もあります。この機会はとても大事だと思い、いつも感謝しています。
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