はじめに:テスト作成が抱える構造的な課題
学校現場において、テスト作成は避けて通れない業務です。小テスト、単元テスト、補習用課題、入試対策問題など、教員は常に「評価」と向き合い続けています。
一方で、多くの教員が次のような悩みを抱えているのではないでしょうか。
- 問題作成に時間がかかりすぎる
- 難易度調整や類題作成が負担になる
- 採点や集計に追われ、授業改善に時間を割けない
これらは、個人の努力不足ではなく、評価業務そのものが抱える構造的な課題です。
近年、1人1台端末の整備やCBT(Computer Based Testing:コンピュータを使った試験方式)の導入が進み、Webテストは徐々に学校現場に浸透してきました。そして今、その流れをさらに加速させているのが生成AIの登場です。
生成AIとは何か ― 教育現場での正しい位置づけ
生成AIは、文章・問題・コードなどを自動生成する技術です。教育分野では、教材作成や授業準備を補助するツールとして注目されています。
ただし、ここで強調しておきたいのは、生成AIは教員の代替ではなく、思考を支援する道具であるという点です。
この視点について、私は学びエイドの香川秀俊さんから多くを学びました。香川さんが繰り返し伝えてくださったのは、「ツールは目的ではなく、学びを支える手段である」という考え方です。具体的には、テクノロジーを導入する際に「何ができるようになったか」ではなく、「それによって生徒の学びがどう深まったか」を問い続ける姿勢の重要性を教えていただきました。
生成AIも同様です。「AIで問題が作れるようになった」こと自体に価値があるのではなく、その結果として授業や評価がどう変わるのかが本質なのです。
Webテストと生成AIが相性の良い理由
生成AIとWebテストは、非常に相性の良い組み合わせです。
① 類題・複数パターンの生成が容易
Webテストでは、ランダム出題や個別最適化が求められます。生成AIを活用すれば、以下のことが短時間で可能になります。
- 同一単元での難易度調整
- 誤答パターンを意識した選択肢作成
- 複数回実施に耐える問題量の確保
これは教員の負担軽減だけでなく、生徒一人ひとりの理解度に応じた学習設計にもつながります。
② フィードバックまで含めた設計ができる
生成AIは、問題文だけでなく、次のようなフィードバック文の作成も支援してくれます。
- 正解時の解説
- 不正解時のヒント
- 次に意識すべきポイント
Webテストと組み合わせることで、テストは「点数をつけるもの」から「学びを深めるプロセスの一部」へと変わっていきます。
参考書の付録として進む「Webテストの網羅化」
最近では、生成AIという言葉を前面に出さなくとも、参考書の付録としてWebテストを網羅的に提供する動きが広がっています。
単元ごとの確認テストや到達度チェックがオンラインで用意され、「解く → すぐに結果を確認 → 間違えた箇所を再演習」という学習サイクルが自然に設計されています。
これは単なる付加価値ではなく、「学習 → 確認 → 修正 → 再挑戦」という学びの構造そのものを支える仕組みです。
生成AIは、この流れを裏側から支える存在です。問題作成や類題生成を効率化することで、教材は「読むもの」から「学びを自己調整するツール」へと進化しています。
生成AI時代の評価設計 ― 教員が握るべきもの
ツールが高度化する一方で、教員に求められる役割の重要性は変わりません。むしろ、より本質的な部分に集中できるようになります。
生成AIを使ったWebテスト作成において重要なのは、評価の設計を教員が握り続けることです。
- 何を評価するのか
- どこを到達点とするのか
- 誤答をどのように扱うのか
- この問題で何を測りたいのか
これらの判断は、生成AIにも参考書にも委ねることはできません。AIは問題を生成できますが、その意図を持つのは人間だけです。
テストはこれからも、以下のような役割を強めていくでしょう。
- 生徒が自分の理解度を把握するためのもの
- 次の学習行動を考えるための材料
- 教員が授業を改善するための情報源
点数をつけること自体が目的なのではなく、学びを前に進めるための装置としてテストを再設計する。生成AIは、その再設計を支える強力な道具なのです。
おわりに:生成AIを「教育の味方」にするために
生成AIは、使い方次第で、大きな可能性を持っています。
- 教員の負担を軽減し
- 生徒の学びを可視化し
- 授業と評価をつなぐ
しかし、それは決して自動的に実現するものではありません。「どう使うか」「何のために使うか」を考え続けることが、これからの教員には求められます。
まずは小さく始めてみることをお勧めします。例えば、次回の小テストで生成AIを使って類題を1問作ってみる。その結果を同僚と共有してみる。そうした小さな実践の積み重ねが、やがて評価のあり方そのものを変えていくはずです。
学びエイドで教わった「道具は学びを支えるためにある」という視点を大切にしながら、生成AIを教育の味方として活用していきたいと考えています。



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