青チャートを学校で購入させても、すべての生徒が継続して使うとは限りません。
最初の数ページだけ解いて、その後は開かなくなる生徒もいます。定期考査前に指定されたところだけ確認する生徒や、解答を写して提出することが目的になる生徒もいます。
そのような状況を見て、「本人のやる気がないから仕方がない」と考えるのは簡単です。しかし、学校教材として青チャートを採用するのであれば、使い続けられる環境をつくることも教員の役割ではないでしょうか。
青チャートは、購入しただけで自学自習の習慣が身につく教材ではありません。問題数が多く、難易度にも幅があり、教科書や学校問題集との使い分けも分かりにくいためです。
生徒の意欲だけに委ねるのではなく、教員が年間計画、教材の役割、到達目標、進捗確認、相談環境を設計する必要があります。
本記事では、学校教員の立場から、生徒に青チャートを途中で諦めさせず、一冊をやり切るところまで支える7つの工夫を紹介します。
1.年間の学習スケジュールを示す
最初の工夫は、教員が青チャートを使用する年間スケジュールを示すことです。
「各自で進めてください」「受験までに一冊終わらせましょう」と伝えるだけでは、生徒は、いつ、どこまで取り組めばよいのか判断できません。ゴールが遠すぎるため、目の前の宿題や定期考査を優先し、青チャートは後回しになります。
そこで、学校の年間行事予定と授業進度を重ね、学習の節目をあらかじめ設定します。
例えば、一般的な3学期制であれば、次のような計画が考えられます。
| 時期 | 青チャートの使い方 |
|---|---|
| 1学期 | 教科書と並行して、対応する例題を確認する |
| 夏休み | 1学期までの既習範囲を一度やり切る |
| 2学期 | 新しい単元を教科書と並行して進める |
| 秋の連休・学校行事期 | 夏休み後に学習した範囲を回収する |
| 冬休み | 2学期までの既習範囲を整理する |
| 入試期間・家庭学習日 | 未完了の範囲や3学期の既習内容を進める |
| 春休み | 1年間の既習範囲を完成させる |
冬休みは短いため、秋以降の演習をすべて冬休みに集中させるのは現実的ではありません。シルバーウィークなどの連休、文化祭前後、定期考査後、高校入試や中学入試に伴う家庭学習日なども利用し、少しずつ演習を授業進度に追いつかせます。
もちろん、文化祭の準備期間などは、生徒にとって普段以上に忙しい場合があります。その時期に大量の課題を出すという意味ではありません。授業が進みにくい期間を、短い単元や未完了部分を回収する機会として位置づけます。
生徒に示したいのは、ページ数だけではなく、節目ごとの状態です。
夏休み終了時点では、1学期までの既習範囲に一度は取り組んでいる状態を目指します。
このような共通の目安があれば、生徒は現在地を確認できます。青チャートを、年間学習の進度を測るバロメーターとして使えるようになります。
2.授業内で青チャートの使い方を教える
青チャートを配付し、「分からないときに使いなさい」と説明するだけでは、十分ではありません。
生徒は、対応する例題の探し方、指針や解説の読み方、練習問題へ進むタイミングなどを知らないことがあります。参考書を使った自学の経験が少ない生徒ほど、最初の使い方が分からず、そのまま開かなくなります。
これを踏まえ、最初は授業内で実際に青チャートを開かせます。
例えば、学校問題集で教科書に直接掲載されていない問題を扱うときに、対応する青チャートの例題を探します。そのうえで、次の流れを教員が実演します。
- 問題文を読み、まず自分で方針を考える
- 方針が立たなければ、指針や解説を読む
- なぜその解法を使うのか確認する
- 青チャートを閉じて、白紙から解き直す
- 元の学校問題集へ戻る
- 余裕があれば類題や発展問題へ進む
授業期間中に、教科書と並行して青チャートに触れる時間をつくります。これを「0周目」と考えれば、長期休暇に既習範囲をまとめて解くときも、すべてが初見にはなりません。
参考書を自分で使えるようにすること自体を、授業で教える必要があります。
3.教科書・問題集・プリントとの役割を整理する
青チャートを諦める原因の一つは、単純に教材が多すぎることです。
教科書、学校指定の問題集、青チャート、授業プリントに似た問題が並び、それぞれに課題が出れば、生徒はどの教材を優先すべきか分からなくなります。結果として、提出期限のある教材だけをこなし、青チャートは使われなくなります。
教員側が、それぞれの教材の役割を明確にする必要があります。
| 教材 | 主な役割 |
|---|---|
| 教科書 | 定義・公式・基本的な考え方を学ぶ |
| 学校問題集 | 授業内容を反復し、計算や基本問題を定着させる |
| 青チャート | 解法を確認し、類題・応用問題へ学習を広げる |
| 補充プリント | 教材だけでは不足する演習や学校独自の内容を補う |
役割が重複する場合は、課題の総量を調整します。
青チャートを使わせたいと言いながら、学校問題集と大量のプリントもすべて課すのは無理があります。青チャートを学習の中心に置くなら、問題集を別に購入しない、基本的な反復練習だけをプリント冊子で補う、といった選択肢も考えられます。
大切なのは、教材を増やすことではなく、生徒が学習の流れを理解できることです。
4.「やり切った」と判断する基準を明確にする
「この範囲を終わらせなさい」と伝えても、生徒によって「終わった」の意味は異なります。
解答をノートに写せば終わりだと考える生徒もいれば、一問を完全に理解するまで何時間も先へ進めない生徒もいます。どちらも、一冊を継続して使ううえでは問題があります。
教員が、1周目の完了基準を示す必要があります。
例えば、次のような基準です。
- すべての問題を一度は自力で考える
- 解けなければ指針や解説を確認する
- 解説を閉じて、もう一度解き直す
- 理解が不十分な問題には印をつける
- 難しい問題で止まり続けず、対象範囲の最後まで進む
ここで重要なのは、「やり切る」と「完璧にする」を分けることです。
1周目の目的は、すべての問題を完全に自力で解けるようにすることではありません。全問題に一度は向き合い、自分が解ける問題と、まだ支援が必要な問題を把握し、最後まで到達することです。
問題の状態は、次のように記録できます。
- ○:何も見ずに自力で解けた
- △:方針は立ったが、途中で止まった
- ×:方針が立たず、解説を確認した
- ★:重要だと感じた問題、もう一度解きたい問題
分からない問題を残しても構いません。ただし、どの問題が、なぜ分からないのかを把握した状態にしておきます。
5.複数の到達目標を用意し、生徒に選択させる
同じ授業を受けていても、生徒の理解度や進路目標は異なります。全員に同じ問題数、同じ難易度、同じ完成度を求めれば、ある生徒には難しすぎ、別の生徒には物足りない課題になります。
そこで、共通する学習範囲の中に、複数の到達目標を用意します。
| 到達目標 | 取り組み方の例 |
|---|---|
| 基礎確認 | 例題の考え方を理解し、白紙から解き直す |
| 標準定着 | 例題に加えて、対応する練習問題・類題まで解く |
| 発展挑戦 | 重要例題や発展問題まで取り組み、複数の解法を比較する |
| 弱点克服 | 苦手な単元や、以前△・×をつけた問題を重点的に解き直す |
教員が生徒を固定的に振り分けるのではなく、生徒自身が現在の理解度や進路希望に応じて選びます。
ただし、「好きなコースを選んで終わり」ではありません。
- 現在の成績や模試結果を確認する
- 今回の到達目標を選ぶ
- その目標を選んだ理由を書く
- 学習後に達成状況を振り返る
- 次の期間の目標を修正する
という自己調整の過程まで含めます。
ここでは、共通性と個別性を分けて考えることが大切です。
- 教員が示すもの:取り組む時期と既習範囲
- 生徒が選ぶもの:目指す到達水準と学習の重点
- 共通して求めるもの:決めた範囲を途中で投げ出さず、最後まで進むこと
共通の学習範囲の中に複数の経路と到達点を用意することで、複線的な学びが可能になります。
6.学習の進捗を定期的に確認し、可視化する
青チャートは分量が多いため、生徒は進んでいても達成感を得にくいことがあります。また、教員も、休暇の最後にノートを提出させるまで、生徒が途中で止まっていることに気づけない場合があります。
これを防ぐために、学習の進捗を定期的に確認できるようにします。
- 単元ごとの進捗表を用意する
- 目次に完了日を記録させる
- 25%、50%、75%、100%の地点を示す
- 長期休暇前に、問題数と学習可能日数から計画を立てさせる
- 定期考査や学校行事の節目に、現在地を振り返らせる
- 次の節目までに進める範囲を再設定させる
進捗確認は、生徒を監視するためではありません。計画と実際のずれに気づき、途中で修正するために行います。
教員が毎週全員のノートを細かく点検する方法は、負担が大きく、長期的に続きません。生徒自身が進捗表を管理し、節目ごとに短く振り返る形であれば、自己調整を促しながら教員の負担も抑えられます。
また、進捗が遅れていること自体を直ちに否定的に評価するのではなく、原因を考えさせます。
- 1日の問題数が多すぎた
- 難しい問題に時間をかけすぎた
- 部活動や学校行事を計画に入れていなかった
- 教科書の理解が不十分だった
- 選んだ到達目標が現在の力に合っていなかった
原因が分かれば、計画を現実的なものへ修正できます。
7.質問・相談できる学習環境をつくる
青チャートは自学自習に利用できる参考書ですが、完全に一人で進めさせる必要はありません。
解説を読んでも分からない問題が続けば、生徒は「自分には青チャートは無理だ」と感じます。分からない問題を抱えたまま孤立させない仕組みが必要です。
例えば、次のような方法が考えられます。
- 質問したい問題番号を記録させる
- 授業内に短い相談時間を設ける
- 生徒同士で解法の方針を説明し合う
- 補習で質問の多かった問題をまとめて扱う
- 質問の前に「どこまで分かったか」を整理させる
- 長期休暇後に、共通してつまずいた問題を授業で扱う
相談するときに、すぐ答えを教える必要はありません。
「問題の条件をどのように整理したか」「どの公式を使おうとしたか」「どの行から分からなくなったか」を説明させます。自分の理解状況を言葉にすることも、学習の一部です。
また、生徒同士の相談を認める場合は、解答を写すことと、考え方を共有することの違いを示す必要があります。最初は相談しても、最後には自分の席で白紙から解き直すというルールを設ければ、協働と個人の理解を両立できます。
自分で学ぶことと、一人で抱え込むことは同じではありません。
青チャートを諦める原因を、生徒だけの問題にしない
青チャートが続かないとき、生徒の意志や根気だけが原因とは限りません。
- いつまでに何をすればよいか分からない
- 教科書や学校問題集との使い分けが分からない
- 完璧に解かなければならないと思っている
- 現在の学力に合わない到達目標を課されている
- 進んでいる実感を得られない
- 分からない問題を相談できない
このような状況は、授業や教材の設計によって改善できます。
一方で、教員が細かく管理し、毎回の提出を追い続ければよいわけでもありません。過度な管理は、生徒が自分で目標を立て、学習を調整する機会を奪います。また、教員側の確認作業も継続できなくなります。
教員が行うのは、すべての学習を管理することではなく、学習を続けるための枠組みをつくることです。
年間の節目、教材の役割、完了の基準、複数の到達目標、振り返りの機会、相談できる環境を用意し、その中で生徒が自分の学習を選択・調整できるようにします。
まとめ|やり切るための環境を教員が設計する
青チャートを学校教材として活用するなら、購入後の使い方まで設計する必要があります。
生徒に一冊をやり切らせるための工夫は、次の7つです。
- 年間の学習スケジュールを示す
- 授業内で青チャートの使い方を教える
- 教科書・問題集・プリントとの役割を整理する
- 「やり切った」と判断する基準を明確にする
- 複数の到達目標を用意し、生徒に選択させる
- 学習の進捗を定期的に確認し、可視化する
- 質問・相談できる学習環境をつくる
大切なのは、生徒全員に同じ量と同じ到達点を一律に求めることではありません。
教員が共通の学習時期と範囲を示し、その中で、生徒が自分の理解度や進路目標に応じて到達水準を選びます。学習後には振り返りを行い、次の目標を調整します。
青チャートをやり切れるかどうかを、生徒の意欲だけに委ねてはいけません。一方、教員がすべてを管理する必要もありません。
生徒が自分で学び続けられる仕組みを教員が設計すること。それが、青チャートを途中で諦めさせず、一冊を長く使い続けるための土台になると考えています。
前回の記事では、長期休暇や学校行事、入試期間を利用し、青チャートを年間学習のバロメーターとして使う方法を紹介しました。あわせて読むことで、年間計画と日々の支援をどのように結びつけるか整理できます。


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