青チャートを使い始めた生徒から、よく出てくる疑問があります。
「青チャートは、例題だけ解けばよいのでしょうか」
青チャートには多くの問題が掲載されています。学校の授業や宿題と並行しながら、すべての問題に取り組むのは簡単ではありません。そのため、まず例題を中心に学習しようと考えるのは、現実的な判断です。
結論からいえば、青チャートは例題を中心に進めて構いません。特に、学校の授業内容を理解したい生徒や、典型的な問題の解法を身につけたい生徒は、最初からすべての練習問題や発展問題に取り組む必要はありません。
ただし、「例題だけでよい」という言葉には注意が必要です。
例題の解説を読み、分かった気になって次へ進むだけでは、数学の力は十分に身につきません。大切なのは、例題の考え方を理解した後、解説を閉じて自力で解き直し、その解法を別の問題でも使えるようにすることです。
本記事では、青チャートの例題をどのように学習すればよいのか、解説を読んで終わらないための具体的な方法を紹介します。
青チャートは例題を中心に進めてよい
青チャートのような網羅系参考書には、高校数学で身につけたい代表的な問題と解法が幅広く整理されています。その中心となるのが例題です。
例題には、公式をそのまま使う基本的な問題だけでなく、教科書では詳しく扱われていない典型的な解法や、大学入試につながる考え方も含まれています。例題を一つずつ理解することで、高校数学でよく使われる問題の見方や解法を体系的に学べます。
学校では、教科書で基本事項を学び、学校指定の問題集で演習するのが一般的です。そこに加えて青チャートの問題をすべて解こうとすると、こなすべき問題数が多くなりすぎ、かえって一問一問が浅くなってしまうことがあります。
そのため、まずは学校の学習を優先し、分からない問題や、理解を深めたい内容に対応する青チャートの例題を選んで取り組む方法がおすすめです。
例題を中心に学習することは、手を抜くことではありません。むしろ取り組む問題を絞り込み、その一問から考え方を確実に身につけるための学習法です。
「例題を見ること」と「例題を解けること」は違う
青チャートの解説は丁寧に書かれているため、読むと内容を理解できたように感じます。しかし、解説を読んで理解できることと、何も見ずに自分で解けることは同じではありません。
解説を読んでいるときには、使う公式も式の変形も、すでに目の前に示されています。そのため、「自分でも思いつけそうだ」と感じやすくなります。
ところが、翌日に同じ問題を白紙から解こうとすると、最初の式を立てられないことがあります。これは、解答の流れを理解しただけで、問題から解法を選び出す過程が身についていないためです。
数学の問題を自力で解くためには、少なくとも次のことが必要です。
- 問題文から条件を読み取る
- 何を求める問題なのか整理する
- 使えそうな定義・公式・考え方を選ぶ
- 解答の方針を立てる
- 計算や論証を最後まで進める
完成した解答を読むだけでは、この一連の判断を自分で経験できません。したがって、例題の学習では「解説を読む時間」よりも「解説を閉じて自力で再現する時間」の方がずっと重要になります。具体的な進め方は、次の項で見ていきます。
まずは解説を見る前に考える
例題を開いたら、すぐに解説を読むのではなく、最初に自分で考える時間をつくります。
長時間悩み続ける必要はありません。問題文を読み、次の内容を確認します。
- 何が与えられているか
- 何を求めるのか
- どの単元の問題なのか
- 使えそうな公式や既習事項は何か
- 最初の一手として何ができそうか
解答までたどり着けなくても、「この公式を使うのではないか」「ここまでは式にできる」というところまで考えることに意味があります。
自分で考えてから解説を読むと、自分の方針と模範解答の違いが分かります。何も考えずに解説を読む場合よりも、「なぜその考え方が必要なのか」に気づきやすくなるでしょう。
一方で、考え方がまったく浮かばない問題に何十分も使う必要はありません。数分考えて方針が立たなければ、解説や「指針」に進み、考え方を学びましょう。参考書は、解けるかどうかを判定するためだけではなく、知らない解法を学ぶためのものでもあります。
解説では「なぜその式を立てるのか」を確認する
解説を読むときは、式変形や計算結果だけを追わないようにします。
注目したいのは、解答の最初にある方針です。
- なぜこの文字を置くのか
- なぜこの公式を選ぶのか
- 問題文のどの条件を利用しているのか
- なぜ場合分けが必要なのか
- どの既習事項と結びついているのか
この部分を理解できなければ、数字や表現が変わった問題に対応できません。
また、自分が考えた方針と解説を比較することも大切です。自分の方法でも解けるのか、途中で行き詰まるとすればどこか、模範解答の方法にはどのようなよさがあるのかを考えます。
模範解答を一字一句覚える必要はありません。覚えるべきなのは、問題を見たときの着眼点と、解法を選ぶ理由です。
解説を閉じて白紙から解き直す
解説を理解したら、必ず参考書を閉じて、白紙から例題を解き直します。ここが、青チャートの例題学習で最も重要な段階です。
解説を横に置いたまま同じ式を書き写すだけでは、自力で解けるようになったか確認できません。問題文だけを見て、最初の一行から答えまで、自分の力で書きます。
途中で分からなくなった場合は、すぐに解答をすべて見るのではなく、必要な部分だけ確認します。確認したら再び閉じ、続きは自分で解きます。
最後まで解けた後は、答えが合っているかだけでなく、次の点も確認します。
- 解法の方針を自分で説明できるか
- 必要な条件をすべて使っているか
- 計算や論証に飛躍がないか
- 同じ種類の問題を見分ける手掛かりは何か
白紙から再現できなければ、まだその例題を身につけたとはいえません。逆に、模範解答と表現が多少違っていても、考え方を説明しながら正しく解ければ、理解は着実に進んでいます。
元の学校問題集へ戻る
学校問題集で分からない問題に出会い、青チャートの例題を調べた場合は、例題を解き直した後、必ず元の問題へ戻ります。
青チャートの例題が解けたことだけで満足すると、最初の目的を忘れてしまいます。確認したいのは、学んだ考え方を使って、学校問題集の問題を自力で解けるようになったかどうかです。
元の問題は、例題と数字や条件、問われ方が少し異なるはずです。たとえば、同じ因数分解の考え方を使う問題でも、係数が変わっていたり、文字の数が一つ増えていたりします。その違いがあっても同じ考え方を使えれば、解法への理解が深まったと判断できます。
解けなかった場合は、例題と元の問題を比較します。
- 共通している条件は何か
- 違っている条件は何か
- 例題のどの考え方を使えるか
- 新たに必要となる考え方はあるか
この比較によって、解法をそのまま暗記するのではなく、問題に応じて使う力が育ちます。
例題だけで終えてよい生徒と、類題まで進みたい生徒
「例題だけでよいか」という問いへの答えは、学習者の現在の理解度や目的によって変わります。
まず学校の内容を理解したい場合
学校問題集で分からない問題を解くために青チャートを使っている場合は、対応する例題を理解し、元の問題を自力で解ければ、ひとまず学習の目的は達成しています。
すべての類題や練習問題まで進む必要はありません。限られた時間の中では、学校の授業や宿題を優先し、つまずいた内容を青チャートで補う使い方で十分です。
典型問題を確実に身につけたい場合
大学入試を意識し、典型的な解法を確実に身につけたい場合は、例題を白紙から解き直した後、対応する類題にも取り組みましょう。
例題と少し異なる問題を解くことで、解法を理解しているのか、直前に見た手順を覚えているだけなのかを確認できます。
類題をすべて解く必要はありません。理解を確認するために、まず一問選んで取り組むだけでも意味があります。
難関大学を目指す場合
難関大学を目指す生徒は、例題と類題で基本的な解法を身につけた後、複数の知識を組み合わせる問題や発展的な問題へ進む必要があります。
ただし、難しい問題へ急ぐことが重要なのではありません。基本的な例題を見たときに、短時間で方針を立てられる状態をつくることが先です。基礎が曖昧なまま応用問題へ進んでも、解説を読むだけの学習になりやすいためです。
類題は「例題を理解したか」を確かめるテスト
類題は、例題をもう一度練習するだけの問題ではありません。例題で学んだ考え方を、少し異なる条件でも使えるか確認するためのテストです。
例題の直後に類題を解く場合は、解法の記憶が残っています。そのため、解けたとしても完全に定着したとは限りません。
次のように、時間を空けて取り組む方法も効果的です。
- 例題を学習した直後に一問解く
- 翌日に、何も見ずにもう一度解く
- 1週間後に、例題または類題を解く
- 定期考査前に、間違えた問題だけ解き直す
毎回すべての問題を解き直すのではなく、解けなかった問題や方針がすぐに立たなかった問題を中心に復習します。
「青チャートを何周したか」よりも、「以前解けなかった問題を、今は自力で解けるか」の方がずっと重要です。
解けなかった理由を記録する
間違えた問題には印をつけるだけでなく、なぜ解けなかったのかを短く記録すると、復習しやすくなります。
例えば、次のように分類できます。
- 公式や定義を覚えていなかった
- 問題文の条件を読み落とした
- 解法の方針が思いつかなかった
- 方針は正しかったが計算を間違えた
- 場合分けや条件確認が不足していた
- 解説を見れば分かるが、自力では再現できなかった
計算ミスをした問題と、方針を立てられなかった問題では、必要な復習が異なります。
計算ミスであれば、途中式の書き方や検算方法を見直します。方針が立たなかった場合は、問題の特徴と使う解法の関係を整理し、時間を空けて白紙から解き直します。
間違いの理由を記録することによって、ただ正解と不正解を数えるのではなく、自分に不足している力を把握できます。
例題学習で避けたい三つのこと
解答を丸ごとノートに写す きれいな解答を書き写すと勉強したように感じますが、自分で考える過程がありません。解説を読むときは方針を理解し、その後は参考書を閉じて自分の言葉と式で解き直しましょう。
一度解けたら二度と戻らない 解説を読んだ直後に解けても、時間がたつと忘れます。一度で完成したと考えず、翌日や1週間後にもう一度確認しましょう。
解けない問題に長時間こだわり続ける 青チャートは、まだ知らない解法を学ぶための参考書でもあります。考えても方針が立たない場合は、適切なタイミングで解説を読み、考え方を学ぶことが大切です。ただし、読んだ後には必ず自力で解き直します。
青チャートの例題を使った学習サイクル
ここまでの内容を、実際の学習手順として整理します。
- 学校問題集または青チャートの例題を、まず自分で考える
- 条件、求めるもの、使えそうな公式を整理する
- 方針が立たなければ、青チャートの指針や解説を読む
- 式の手順ではなく、解法を選ぶ理由を理解する
- 解説を閉じ、白紙から例題を解き直す
- 学校問題集で分からなかった元の問題へ戻る
- 余裕があれば類題を一問解く
- 解けなかった理由を記録する
- 翌日や1週間後に、印をつけた問題を解き直す
このサイクルを繰り返せば、例題を読むだけの学習から、解法を自力で使う学習へと変えることができます。
まとめ|例題の数より、自力で使える解法を増やす
青チャートは、例題を中心に学習して構いません。学校の授業と問題集を優先しながら使う場合、最初からすべての練習問題や発展問題を解く必要はありません。
ただし、例題の解説を読んだだけで「終わった」と考えないことが重要です。
まず自分で考え、解説で方針を理解し、参考書を閉じて白紙から解き直します。学校問題集の問題をきっかけに調べた場合は、元の問題へ戻って自力で解きます。余裕があれば類題を使って理解を確認し、時間を空けて復習します。
例題だけでよいかどうかは、解いた問題の数ではなく、その例題から学んだ解法を別の問題でも使えるかどうかで判断すべきです。
青チャートを何ページ進めたか、何周したかを目標にするのではなく、自力で使える考え方を一つずつ増やしていきましょう。
前回の記事では、青チャートを最初から全部解くのではなく、教科書・学校問題集と併用する方法を紹介しました。あわせて読むことで、青チャートを日々の学習の中でどのように位置づけるか、より具体的に考えられると思います。


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