長期休暇の数学課題として、問題集の指定範囲を解かせる学校は多いと思います。
青チャートを採用している場合も、「例題○番から○番まで」「○ページまで」と範囲を指定することはできます。しかし、問題番号だけを示して休暇に入ると、生徒によって学習の進め方に大きな差が生まれます。
計画的に進められる生徒がいる一方で、休暇の終わりに解答を写す生徒もいます。どこから手をつければよいか分からず、ほとんど取り組めない生徒もいます。また、早く終わった生徒には、その先へ進む道筋が用意されていないこともあります。
そこで考えたいのが、青チャートとプリント冊子を組み合わせた長期休暇課題です。全員が取り組む共通課題と、さらに挑戦したい生徒のためのプラス課題を用意し、休暇後の小テストで両方の成果を確認します。
プリント冊子は、青チャートとは別の大量の課題を追加するためのものではありません。青チャートの指定問題、補充したい演習、共通課題、プラス課題を一つの学習経路として示すためのものです。
休暇後には、共通課題とプラス課題の両方から小テストを行います。取り組んだページ数だけではなく、課題を通して何を自力で解けるようになったかを確認します。
本記事では、青チャートを長期休暇の課題にする場合の、プリント冊子、共通課題とプラス課題、小テストの設計について考えます。
問題番号を指定するだけでは、学習の流れが見えにくい
青チャートは、高校数学の基本事項から大学入試につながる問題まで幅広く収録されています。そのため、長期休暇に既習範囲を復習する教材として利用できます。
一方で、収録されている問題の難易度には幅があります。生徒が自分で問題を選び、解説を読み、必要な類題へ進むには、参考書を使った自学の経験が必要です。
教員が問題番号だけを指定すると、生徒には次のことが分かりにくくなります。
- どの問題から始めればよいか
- 一問にどのくらい時間を使うか
- 解けなかったときにどうするか
- どこまでできれば課題を終えたと考えるか
- 基本問題が終わった後、何に取り組むか
- 休暇後に何を確認されるか
課題を出すのであれば、問題だけでなく、学習の進め方と到達点も示す必要があります。
プリント冊子は「問題の追加」ではなく「学習の案内役」にする
プリント冊子を作ると、教員は問題をたくさん掲載したくなります。しかし、青チャートに加えて大量のプリントを課せば、教材が二重になります。
冊子の中心は、問題そのものではなく、学習の順序を示すことです。
例えば、一つの単元を次のように構成します。
- 教科書の基本事項を確認する
- 青チャートの指定例題を解く
- プリント冊子の基本演習に取り組む
- 青チャートの類題・練習問題を解く
- 理解度を自己評価する
- 余裕があればプラス課題へ進む
青チャートは、典型的な問題の考え方や解法を学ぶために使います。プリント冊子では、計算練習や小刻みな反復など、青チャートだけでは量が不足すると判断した部分を補います。
| 教材 | 主な役割 |
|---|---|
| 教科書 | 定義・公式・基本的な考え方を確認する |
| 青チャート | 典型的な解法を学び、類題・応用へ進む |
| プリント冊子 | 学習順序を示し、不足する演習を補う |
| 休暇後の小テスト | 課題内容が定着したか確認する |
プリント冊子を見れば、「次にどの教材の、どの問題へ進めばよいか」が分かる状態を目指します。
冊子の表紙に学習計画と到達目標を置く
冊子の最初には、問題ではなく学習計画のページを置きます。
教員が決めるのは、今回取り組む既習範囲と共通の最低到達点です。その範囲をどのような日程で進め、どの水準まで仕上げるかは、生徒自身にも考えさせます。
計画欄には、例えば次の項目を設けます。
- 今回の対象範囲
- 休暇中に学習できる日数
- 部活動・講習・家庭の予定
- 1日当たりに取り組む問題数
- 遅れを取り戻すための予備日
- 自分が選ぶ到達目標
- 休暇終了時に目指す状態
「毎日2時間勉強する」という時間だけの計画ではなく、どの問題まで進めるかを具体的にします。
例えば、学習に使える日が30日ある場合、30日すべてを演習日にする必要はありません。
- 新しい問題に取り組む日:22日
- 解き直しの日:4日
- 遅れを取り戻す予備日:4日
と分ければ、部活動や体調不良によって予定どおり進まない日があっても、計画全体を立て直せます。
教員が一日ごとの予定を細かく指定するのではなく、生徒が自分の生活に合わせて計画をつくることが大切です。
全員共通の課題で最低到達点を保障する
長期休暇課題を完全な自由選択にすると、基礎が必要な生徒ほど、何に取り組めばよいか分からなくなることがあります。
そこで、全員が取り組む共通課題を設けます。
共通課題には、次のような内容を入れます。
- 教科書の基本事項を確認する問題
- 基本的な計算問題
- 青チャートの基本例題
- 次の学期の学習に必要となる問題
- 多くの生徒が定期考査でつまずいた内容
共通課題の目的は、すべての生徒を同じ点数に到達させることではなく、「この範囲を学び終えた生徒には、少なくともここまでは自力で解けるようになってほしい」という最低到達点を保障することです。
また、完了基準も明確にします。
- まず自力で問題を考える
- 解けなければ青チャートの指針や解説を確認する
- 解説を閉じて白紙から解き直す
- 自力で解けなかった問題に印をつける
- 難しい問題で止まり続けず、指定範囲の最後まで進む
全問を完璧にすることより、未着手の問題を残さず、自分の理解状況を把握することを優先します。
共通課題の先にプラス課題を用意する
全員に共通課題だけを出すと、数学が得意な生徒や難関大学を目指す生徒には、物足りない場合があります。
そこで、冊子の各単元にプラス課題を用意します。以前勤務していた学校では、同じ科目を担当する先生と、共通課題に加えてプラス課題を用意し、その内容を小テストにも出題する形で授業を行っていました。
プラス課題があることで、共通課題を早く終えた生徒の学習が止まりません。また、さらに力を伸ばしたい生徒に対して、次に何をすればよいか具体的に示せます。
プラス課題には、単に同じ計算を増やすのではなく、共通課題より一段深く考える問題を入れます。
- 青チャートの重要例題・発展的な例題
- 複数の知識を組み合わせる問題
- 模試や大学入試につながる問題
- 条件を変えて考える問題
- 別解を比較できる問題
- 理由の説明や証明を求める問題
ただし、プラス課題を全員必須にすれば、それは「プラス」ではなくなります。
教員は共通課題を明確に示し、その先の到達目標としてプラス課題を位置づけます。生徒は、自分の理解度、進路目標、休暇中に使える時間を踏まえて、どこまで挑戦するか選びます。
到達度を生徒自身に設定させる
同じ既習範囲を復習していても、目指す到達水準は一人ひとり異なります。こうした、共通の土台を保ちながら生徒ごとに深さや重点を選べる学び方を、ここでは「複線的な学び」と呼びます。
プリント冊子では、例えば次のような到達目標を提示できます。
| 到達目標 | 取り組む内容 |
|---|---|
| 基礎完成 | 共通課題と基本例題を白紙から解き直す |
| 標準定着 | 共通課題に加え、類題・練習問題まで解く |
| 発展挑戦 | プラス課題や重要例題、入試問題まで進む |
| 弱点克服 | 以前間違えた問題や苦手単元を重点的に解き直す |
教員が生徒を固定的にコース分けするのではなく、生徒が自分の到達目標を選びます。
その際には、コース名に丸をつけるだけでなく、次の内容も書かせます。
- その目標を選んだ理由
- 重点的に取り組む単元
- 具体的に解く青チャートの問題番号
- 小テストで目指す結果
- 前回の課題から改善したいこと
学習後には、設定した目標が適切だったか振り返ります。簡単すぎた場合も、難しすぎた場合も、次回の目標設定に生かします。
つまり複線的な学びとは、生徒を別々の教材へ分断することではなく、共通の既習範囲と最低到達点を持ちながら、その先の深さと重点を生徒が選ぶという設計です。同じ青チャートとプリント冊子を使いながら、複数の学習経路を用意します。
小テストの設計:配点と出題形式を分けて考える
長期休暇課題は、提出して終わりにしないことが大切です。休暇後に小テストを行い、課題で扱った考え方を自力で使えるか確認します。小テストがあることで、生徒にとっても、課題に取り組む目的が明確になります。
小テストの設計は、「配点をどう分けるか」と「どう出題するか」の二つに分けて考えると整理しやすくなります。
配点:共通問題とプラス問題に分ける
任意のプラス課題から通常配点の問題を多く出すと、プラス課題が事実上の必修課題になります。基礎を重点的に学ぶことを選んだ生徒が、最初から不利になる設計は避ける必要があります。
そこで、小テストを二つの部分に分けます。
| 区分 | 出題内容 | 配点例 |
|---|---|---|
| 共通問題 | 共通課題と同じ考え方を使う問題 | 80点 |
| プラス問題 | プラス課題と同じ考え方を使う問題 | 20点 |
共通問題で、全員に求める最低到達度と標準的な理解を確認します。プラス問題では、発展的な課題に取り組んだ生徒が、その成果を示せるようにします。
別の方法として、共通問題だけで100点分を構成し、プラス問題を加点問題にすることも考えられます。
どちらを採用するかは、学校の評価方針や小テストの位置づけによって変わります。重要なのは、プラス課題を選ばなかっただけで、共通の到達目標を達成した生徒が不当に低く評価されないことです。
出題形式:課題と同じ問題をそのまま出すだけにしない
課題と同じ問題を小テストに出せば、取り組んだ生徒は成果を出しやすくなります。学習を始めるきっかけとして、指定問題をそのまま出題することにも意味があります。
一方で、すべてをそのまま出題すると、解法を理解せず、答案を暗記する学習になりやすくなります。
そこで、小テストには次のような問題を組み合わせます。
- 課題と同じ問題
- 数値だけを変えた問題
- 条件を少し変えた問題
- 問われ方を変えた問題
- 同じ解法を別の場面で使う類題
例えば、共通問題では、課題と同じ問題を一部出題し、最低限の学習をしたことが結果につながるようにします。そのうえで、条件を変えた類題を出し、解法を自力で使えるか確認します。プラス問題でも同様に、課題で扱った発展問題を丸暗記したかではなく、そこで学んだ考え方を使えるかを見ます。
提出物は、ノートの量だけで評価しない
長期休暇の課題では、演習ノートやプリント冊子を提出させることがあります。しかし、ページ数や空欄の有無を中心に評価すると、解答を写して埋めることが目的になりやすくなります。
提出時には、次の内容を確認します。
- 計画した範囲まで進めたか
- 理解状況を記録しているか(例:○=自力で解けた、△=解説を見て解けた、×=解けなかった、のような記号で)
- 自分で選んだ到達目標に取り組んだか
- 解けなかった問題を把握しているか
- 質問したい問題が明確になっているか
- 学習後の振り返りができているか
演習ノート自体を確認する場合も、全ページを細かく採点する必要はありません。いくつかの問題を抽出して途中式を見たり、小テストの結果と照らし合わせたりする方法があります。
課題の評価は、提出された紙の量だけでなく、休暇後に自力で解ける問題が増えたかという到達度と結びつけます。
休暇後の振り返りまでを課題に含める
小テスト後には、短い振り返りを行います。
- 計画どおりに進められたか
- 選んだ到達目標は適切だったか
- 共通問題のどこでつまずいたか
- プラス課題への挑戦は小テストにつながったか
- 次の長期休暇では何を変えるか
振り返りは、感想を書かせるだけではありません。計画と結果を比較し、次の学習方法を調整するために行います。
例えば、発展挑戦を選んだものの、共通問題で失点が多かった生徒は、次回は基礎や標準の定着を優先できます。反対に、基礎完成を選び、小テストで十分な結果を出した生徒は、次回は標準や発展へ進めます。
長期休暇のたびに、計画、実行、小テスト、振り返りを繰り返します。その積み重ねによって、生徒は自分に合った課題の選び方を学んでいきます。
教員側も続けられる課題にする
プリント冊子を丁寧に作り、全生徒の全問題を採点し、個別のコメントを書く方法は、最初の一度はできても継続が難しくなります。
課題設計では、教員側の負担も考える必要があります。
- 青チャートの問題を活用し、冊子に問題を転載しすぎない
- プリント問題は不足する演習に絞る
- 進捗表と振り返りを中心に確認する
- ノートは抽出して確認する
- 小テストで到達度を把握する
- 質問の多い問題を授業でまとめて扱う
- 次年度も使える冊子の構成にする
青チャートという共通教材があるからこそ、教員が毎回すべての問題を作り直す必要はありません。プリント冊子には、学校の進度、学習順序、補充問題、到達目標、振り返りという、青チャートだけでは示しにくい部分を載せます。
まとめ|プリント冊子で青チャートへの学習導線をつくる
青チャートを長期休暇の課題にする場合、問題番号だけを指定して終わりにするのではなく、学習の進め方を示す必要があります。
プリント冊子には、次の内容をまとめます。
- 休暇中の学習計画
- 青チャートの指定問題と学習順序
- 不足する演習を補う共通課題
- さらに挑戦するためのプラス課題
- 生徒が選ぶ到達目標
- ○・△・×などの進捗記録
- 小テスト後の振り返り
教員は、共通する既習範囲と最低到達点を示します。そのうえで、生徒は、自分の理解度や進路目標に応じて、標準・発展・弱点克服などの経路を選びます。
休暇後の小テストは、共通問題とプラス問題に分けます。共通問題によって全員に必要な内容を確認し、プラス問題によって、さらに挑戦した生徒が成果を示せるようにします。
プリント冊子は、青チャートとは別の課題を増やすためのものではありません。青チャートをどの順序で使い、どこを補い、どの水準まで進むかを示す案内役です。課題、小テスト、振り返りを一つの学習サイクルにすることで、長期休暇を、提出物を終わらせる期間から、自分の到達度を高める期間へ変えられると考えています。
前回の記事では、青チャートを途中で諦めさせないために、教員が年間計画、教材の役割、複数の到達目標、相談環境をどのように設計するか紹介しました。あわせて読むことで、その考え方を長期休暇の課題へ具体化できます。


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