高校数学の参考書として有名な「青チャート」。
学校で配られている人も多いですし、「数学を頑張るなら青チャートをやった方がいい」と聞いたことがある人も多いと思います。
ただ、私はすべての生徒がすぐに青チャートへ進む必要はないと考えています。
むしろ、まだ基本問題が十分に身についていない段階で青チャートを始めると、1問に時間がかかりすぎたり、最後まで解き切れなかったりして、学習効率が落ちてしまうことがあります。
大切なのは、難しい問題集に早く進むことではありません。
まずは、今取り組んでいる基本問題を確実に得点できるようにすることです。
この記事では、私が高校数学を教える中で考えている「青チャートに進む前に身につけてほしい力」について書いてみます。
青チャートをやれば数学ができるようになるわけではない
青チャートには、教科書レベルの基本事項から大学入試で必要になる標準的な問題まで、非常に多くの問題が掲載されています。
そのため、うまく使えばとても有効な教材です。
一方で、収録されている問題数が多いからこそ、使う生徒の現在地によっては負担の大きい教材にもなります。
例えば、教科書や学校問題集の基本問題を解くのにも時間がかかっている生徒が、さらに青チャートを追加するとどうなるでしょうか。
学校の授業を復習する。
学校問題集を解く。
そのうえで青チャートも解く。
これだけでかなりの時間が必要になります。
結果として、どの教材も中途半端になってしまうことがあります。
私は、参考書を増やすことよりも、
今ある教材を自力で解き切れる状態にすること
の方が大切だと考えています。
まずは基本問題を「得点源」にしてほしい
数学が苦手な生徒ほど、難しい問題が解けないことを気にする傾向があります。
しかし、実際のテストでは、難しい問題以前に基本問題をどれだけ確実に取れるかが重要です。
例えば定期テスト。教科書の例題や学校問題集で繰り返し扱った問題が出題されているにもかかわらず、そこで失点しているのであれば、まずはその部分を改善する方が優先です。
新しい参考書を始めるより、
- 教科書の例題をもう一度解く
- 学校問題集の基本問題を解き直す
- 間違えた問題を数日後にもう一度解く
- 解答を見ずに最後まで書けるようにする
こうした学習の方が効果的です。
目標は、
「一度解いたことがある」ではなく、「テストで出たら得点できる」
という状態です。
定期テストでは、まず基本問題を得点源にしてほしいと思います。
これは模試でも同じです。模試を受けると、後半の難しい問題が気になるかもしれません。しかし、まだ前半の小問や典型問題を落としているのであれば、そこを取り切ることの方が先です。
難しい問題に20分使って解けないよりも、基本的な小問を短時間で正確に解く。その方が点数は安定します。
また、模試では時間制限があります。家であれば解ける問題でも、計算に時間がかかりすぎると、本番では得点につながりません。そのため、基本問題については、
解けるかどうかだけでなく、ある程度の速さで解けるか
という視点も大切です。「時間をかければ解ける」という状態から、「見たら方針が立ち、短時間で正確に解ける」という状態を目指してほしいと思います。
まだ青チャートに進まない方がいい生徒の特徴
では、具体的にどのような生徒は、まだ青チャートを本格的に始めなくてもよいのでしょうか。ここまでの内容と重なりますが、目安として整理すると次のようになります。
- 教科書の例題が自力で解けない
- 学校問題集の基本問題に時間がかかりすぎる
- 定期テストで基本問題を落としている
- 模試で小問を取り切れていない
これらに当てはまる場合は、教材を広げるより、今ある教材の精度を上げることを優先してほしいと思います。
なお、習熟度とは別に、もう一つ注意したい点があります。それは、青チャートを最後まで終わらせること自体が目的になってしまうことです。
参考書は、終わらせるために使うものではありません。必要な力を身につけるために使うものです。
「今日は10ページ進んだ」ということより、
「昨日できなかった問題が今日は自力で解けた」
という方が、はるかに重要です。
一つの目安は模試の偏差値60前後
もちろん、青チャートを始める時期を偏差値だけで判断することはできません。特に高校1年生の最初は、高校数学そのものに慣れていないため、模試の結果も安定しにくいです。
それでも、学習段階を考える一つの目安として、私は
全国模試で偏差値60前後
を意識してもよいと考えています。進研模試であれば、偏差値65前後が一つの目安になるでしょう(進研模試は受験者層が幅広いため、同じ実力でも偏差値がやや高く出やすい傾向があります)。
ただし、これは「偏差値60未満なら青チャートをやってはいけない」という意味ではありません。あくまで、
基本問題をある程度安定して解けるようになり、次の段階に進む目安
として考えています。
このくらいの力がついてくると、学校問題集だけでは少し物足りなく感じたり、もう少し多くの典型問題に触れたくなったりする生徒も出てきます。そこで青チャートを使うと、学習効果が高まりやすくなります。
全員が同じ教材を同じように進める必要はない
私は、数学の学習は生徒によって違う道筋があってよいと考えています。全員が同じ問題集を、同じページ数、同じ速度で進める必要はありません。
例えば、まず教科書と学校問題集で基本を固める。そこが十分にできた生徒は青チャートへ進む。さらに余裕のある生徒は、より発展的な問題へ挑戦する。一方で、まだ基本問題に不安がある生徒は、無理に次へ進まず、基本問題を繰り返す。
このように、生徒の到達度によって学習経路が分かれてよいと思います。重要なのは、
どの参考書を使っているかではなく、今の自分に必要な学習ができているか
です。青チャートを使っているから数学が得意なわけではありません。逆に、青チャートを使っていなくても、教科書や学校問題集を高い精度で解けている生徒は十分に力をつけています。
青チャートに進まない期間は何をすればいいのか
「では、青チャートをやらないなら何をすればいいのですか?」と思う人もいるかもしれません。
答えはシンプルです。基本問題を繰り返してください。
ただし、同じ問題を何となく解くだけではありません。
一度目は、授業内容を確認しながら解く。二度目は、できるだけ解答を見ずに解く。三度目は、時間も意識して解く。間違えた問題については、少し日にちを空けてもう一度解く。
このように反復していけば、同じ基本問題でも身につく力は変わります。特に大切なのは、
自力で解き切る経験を増やすこと
です。解説を読んで「分かった」と感じるだけでは、テストではなかなか点につながりません。自分で式を書き、計算し、最後まで答えを出す。その積み重ねが必要です。
青チャートに進めるようになっても、全部解く必要はない
そして、基本問題が安定して青チャートに進めるようになったとしても、青チャートを最初から最後まで全部解く必要はありません。
学校問題集ですでに十分練習した問題であれば、無理に同じレベルの問題を何度も繰り返す必要はないでしょう。
学校問題集には載っていなかった問題を確認する。苦手な分野の例題を補う。もう少し難しい問題に挑戦してみる。このような使い方で十分です。
青チャートは「次に必ず終わらせる問題集」というより、
自分の学習を一段深めるための教材
として使う方がよいと思います。
まとめ|難しい問題より、まず解ける問題を取り切ろう
青チャートは、とてもよくできた参考書です。だからこそ、適切なタイミングで使えば大きな力になります。
一方で、まだ基本問題に時間がかかっている段階で無理に始めると、問題数の多さに追われてしまうこともあります。
まず目指してほしいのは、
定期テストで基本問題を得点源にすること。
そして、
模試では小問や典型問題を時間内にしっかり取り切ること。
その力が身についてきたら、青チャートを使って問題の幅を広げていけばよいと思います。
難しい問題をたくさん解くことよりも、今解けるはずの問題を速く、正確に解けること。数学が伸びる土台は、そこにあります。
焦って次の参考書へ進む必要はありません。自分の到達度に合った教材で、一つずつ「できる」を増やしていきましょう。


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